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読み込み中にくるくる回るあれ

ジャズとデザインとプログラミング

インドのデリーからイギリスのロンドンまで

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深夜特急』という紀行小説がある。幼少期、冬休みにぼんやりと見ていたテレビで『劇的紀行 深夜特急』という大沢たかお主演のドラマが再放送されていた。この小説をドキュメンタリー調でドラマ化したもので、人生で初めて最初から最後まで見たドラマだった。毎日、次の回を見るのが楽しみになり、気付けばテレビに食い入るように見入っていた。

小説の著者の沢木耕太郎は、デリーからロンドンまで、乗り合いバスのみを使い陸路の旅に出る。「気ままな一人旅」というやつで、仕事も辞めて、予定も立てず、その日の気分で歩を進める。ぼったくられたり、騙されたりする。そして、少しずつ旅に慣れていく。気付けば、人生とは何か、そういった精神的な旅にも出始める。

私は、なにか大きな決断をするとき、いつも『深夜特急』に立ち戻ることにしている。社会に要請され身に付けてきた甲冑を通り抜けて、心の深いところにぷすっと刺さり、心地いい痛みを味わせてくれる。「なるほど、どうせなら旅をしよう」と思う。

作中に、好きな一説がある。

思いきり手足が伸せる幸せを味わいながら、甲板に坐ってチャイを飲み、河を渡る風に吹かれていると、カトマンズからの30時間に及ぶ強行軍が、もうすでに楽しかったものと思えてきそうになる。

なんと心地よいのだろう。その気持を言表わしたいのだが、どうしても適切な言葉が見あたらない。 すると、放心したような表情で空を眺めていたアランがぽつりと言う。

"Breeze is nice"

うまいなあ、と思う。

ひとふきのそよ風が、幸せを運んでくれるような人生とはどういったものだろうか。そういったことに思いを馳せる。 すこし辛くても楽しく、刺激的な人生で、たくさんの人に会い、たくさんの本を読み、たくさんの旅に出たい。